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2006年09月11日
147.妻の購入した洋服代は、夫にも支払い義務はあるのか?
Q: 妻がカードで購入した洋服代が、夫である私に請求が来ました。法律上支払う義務はあるのでしょうか。
A: 支払い義務が発生する場合もあります。
普通なら妻のした借金は、自分の洋服を買った代金なので、夫は負担しなくていいんじゃないのかと思ってしまうかもしれませんが、夫婦の日常生活から生じた債務であれば、他の一方が連帯責任を負うことになります。
これは法律上は、民法第760条の「婚姻費用の分担」、第761条の「日常家事による債務の連帯責任」が根拠条文になります。
簡単に解説しますと、
第760条 夫婦生活から生じる費用は夫婦で負担する。(婚姻費用の分担)
第761条 夫婦のどちらか一方が日常の家事に関しておこなった契約は、もう一方も責任を負う。
(日常家事債務の連帯責任)
というものです。
ご質問の例で、妻が普段着用する洋服などをカードで購入した場合は、夫も連帯して支払い義務を負うことになります。
夫が支払い義務を負うかどうかのポイントは、その買い物が「日常家事の範囲内」なのかです。
日常の家事は、夫婦の日常生活に必要な一切の事項とされています。
「日常家事の範囲」を過去の判例から見ると、「夫婦の社会的地位、職業、資産、収入や地域社会の慣習など個別的事情の他、契約の種類、性質など客観的事情も考慮され決定される」とされております。
どこからどこまでが「日常家事の範囲」かは必ずしも明確ではないのですが、基本的には不動産などの高額なものは、日常家事の範囲内から除かれます。
また、妻の家族カードを作って、使用する場合にも、妻がそのカードを使ってした日常生活の範囲内での買い物については、基本的には夫も支払い義務を負います。
この場合、カードを作るときに夫が限度額を設定していると、「同意を与えた」と見られる可能性も高いでしょう。
クレジットカード自体にも通常は使用限度額が設定してあり、不動産などの財産的価値の高いものは基本的には購入できないようになっていますので、使用できる範囲はおのずと日常生活の範囲内の買い物に限定されることが多いと思います。
一枚だけの使用なら金額もそれほどではありませんが、複数枚使えば、あっという間にかなりの額の債務が発生します。ある日突然、カード会社から夫に請求が! なんてこともあるかもしれません。
ただし、カードでの買物代金すべてに、夫の支払い義務があるわけではありません。
前記の「日常生活の範囲」外の買い物であったり、事前に相手方に責任を負わない旨を予告した場合などは連帯責任は発生しないでしょう。
司法書士 大竹弘幸
投稿者: 日時: 2006年09月11日 17:58 | パーマリンク | ▲このページの上へ
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